コラム：モイーズは勇気を持って香川起用を

香川真司とフアン・マタの現状を見れば、プレミアリーグのファンとしては、スペクタクルなプレーをだまし取られたように感じずにはいられないだろう。

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だが、少なくともチェルシーにはマタのポジションに同じようなクオリティーを持った選手が数多くいるのに対して、デイビッド・モイーズは香川を外し続けることでプレーの選択肢を進んで制限しているかのようだ。自らを窮地に追い込むような決断が、なぜ続けられているのだろうか？

水曜日に行われたキャピタル・ワン・カップのリヴァプール戦には先発した日本代表MFだが、本当に大事な場面であるマンチェスターダービーでは、彼はベンチに残ったままだった。

ユナイテッドが終始低調なパフォーマンスを見せた中で、モイーズは交代枠を一つしか使わず、トム・クレバリーの投入を選択。その前のバイヤー・レヴァークーゼン戦に７０分間出場して好プレーを見せていた香川を起用することはなかった。確かにシティ守備陣は強力ではあったが、ユナイテッドの相手陣内でのプレーに繊細な技術やハードワークが決定的に欠けているのが明らかだったにも関わらずである。試合後に監督が、後半に被害の拡大を回避することができて喜んでいる様子を見せていたことは、さらなる恥をかくことへの恐れと、香川の投入がそういう状況を引き起こしていたかもしれないという思いを示唆していた。

ユナイテッドが表明している公式見解は、コンフェデレーションズカップに出場してハードな夏を過ごした香川を、焦って起用したくはないというものだ。だがひざを痛めていたダニー・ウェルベックは、直前の金曜日に初めて本格的な練習を再開したばかりという状況で、ダービーに先発起用されていた。イングランドの若手アタッカーは、クラブが彼のコンディションのことをどれだけ気にかけてくれているのかと心配するべきだろうか？

モイーズはまだ、香川をどう使うべきなのか確信が持てていないのではないか。彼はモイーズがエヴァートンで指揮したことのあるどの選手とも異なるタイプだ。監督自身がまだチームに完全に慣れていない状況で、苦しい序盤の時期に用いて使い慣れてきた戦い方に手を加えることには乗り気ではないように思われる。あるいは単純に、監督が彼に魅力を感じていないかだ。

ユナイテッドが最終的にマルアン・フェライニを獲得したとしても、この夏の間に彼らがチアゴやセスク・ファブレガスの獲得を試みていたという事実は忘れてはならない。フェライニが中盤の低い位置で起用するために獲得されたことが確認された今では、おそらくユナイテッドは今後も攻撃的MFの獲得に興味を持ち続けると推測できる。

そのような状況の中で、「フリー・シンジ」キャンペーンは見落とせないものとなった。ボルシア・ドルトムントのファンは、彼らの応援するクラブに対し、日本代表MFとの再契約を訴え続けてきた。ユルゲン・クロップ監督もミヒャエル・ツォルクSD（スポーツディレクター）も、この夏に獲得の打診を行ったことを認める発言をしている。来年にはもう一度この話が再燃することになるかもしれない。GOALドイツ版のシュテファン・ドリングは、香川が復帰することになっても驚くにはあたらないと語る。

「１月に復帰するのは、十分にあり得ることだと思う。ヌリ・シャヒンと同じような構図の取引も有効かもしれない。シャヒンは、ドルトムントが１８カ月後に買い取ることができるというオプション付きでのレンタルで、レアル・マドリーから復帰した。だがそれが実現するためには、その頃になっても香川がまだポジション争いに苦しんでいることが条件だ」

「スポーツ的な観点から言えば、彼の復帰でドルトムントが得をすることに疑いはない。現在ドルトムントは数人の選手の負傷に対処することを強いられているが、香川が復帰すればいくつかの選択肢を持つことができるようになる。来年の夏にロベルト・レヴァンドフスキがバイエルン・ミュンヘンへ移籍することを考えても、その穴を埋められるかもしれない。マルコ・ロイスが前線に移動して、その後ろには様々な組み合わせの中盤が考えられる」

「接触はあったし、クラブと彼との関係は今でも続いている。それでも、彼がイングランドでの挑戦を１年だけで諦めようとするとは思えないが」

実際のところ、モイーズの構想に割って入る可能性が残されている限りは、香川が脱出を望む可能性は低いだろう。１年目は負傷に苦しみながらも、彼はすでにオールド・トラフォードのファンから非常に人気の高い選手となっている。アシュリー・ヤングの調子を考えれば、彼には少なくともチャンスが与えられてしかるべきだろう。ドルトムントから移籍したことで給料が３倍になったという事実も、残留するための理由になりそうだ。

退団に向けてウェイン・ルーニーのような政治的駆け引きが行われることはあり得ない。練習場での香川はあくまで冷静に自分の仕事を続けている。

９月に行われた代表戦の後のミックスゾーンで、香川がメディアに向けて「なぜ僕がプレーできないのかデイビッド・モイーズに聞いてください」と嘆願したと盛んに報じられたが、日本のメディアがすぐに主張したように、これは不幸な誤訳によるものだった。香川はあくまで落ち着いた謙虚な態度で皮肉な質問をかわして、騒動が引き起こされるのを避けようとしただけだった。

日曜日のダービーマッチで屈辱的敗戦を喫したことは、モイーズが現在自らが立っている大きな舞台にまだ馴染みきれていないことを示す痛々しい証拠となった。おそらく香川のこれまでの欠場は、モイーズが自らの足場を固めるために、より慣れ親しんだタイプの選手を用いて仕事がしたいという要求からもたらされたものだろう。フェライニとレイトン・ベインズの獲得に動いていたこともそれを裏付けている。

だが、今シーズンのユナイテッドが最も相手に脅威を感じさせた試合がレヴァークーゼン戦だったことは偶然ではない。香川は抜け目の無いプレーや高い技術で中盤と前線をリンクしていた。才能ある選手を元いた場所へ返してしまうという失敗を犯すことになる前に、モイーズは未知の存在を恐れずに、選手を信頼してみるべきではないだろうか。